10 乳癌患者の慢性疼痛の管理
10 乳癌患者の慢性疼痛の管理
まとめ
目的:乳癌が引き起こす慢性疼痛の管理に最適の戦略を造り出すよう health care professionals を助ける
結果:疼痛の緩和、副作用の不在、良好なQL
エビデンス:2000年12月までの文献の系統的検討、2001年5月までの系統的でないカバー
推奨:
・乳癌患者は多数の理由で疼痛を経験する。原因を見つけpathophysiology を理解しもっと効果的な管理に向かう。
・病歴と診察、psychosocial 評価、emotional 評価を使って注意深く疼痛の性質、強度を評価すべき。定期的に疼痛緩和を評価すべき。
・患者の疼痛強度の自己報告が、すべての最初とその後の評価の源になるデ−タ
・妥当で効果的な疼痛管理プランを造り出すためには、患者と家族の教育と参加、学際チ−ムアプロ−チが必要。
・疼痛管理の最初の目的は原因を見つけて可能であればこれを治療すること。
・治療でまず優先することは素早く完全に疼痛をコントロ−ルすること。これは患者が判断する。次に優先することは疼痛の再発を予防すること。
・鎮痛剤は定期的に時間で使用する。完全に消し去る場合、必要ならば追加する。
・薬物療法が必要なときはWHOの3段階法を使うよう推奨する。個々の疼痛の強度はレジメが始まる段階で決まる。
・麻薬は経口が最初の選択肢。経口がだめなら皮膚貼付、経直腸を考慮。注射が必要なときは皮下注が最初のル−ト。麻薬の筋注は勧められない。
・正確に話すことと注意深い観察と滴定が、麻薬を変更する時には必要。
・麻薬療法を始める、量、ル−トを変更するしたあとは、投与量の評価を24時間後にする。
・麻薬耐性は稀、嗜癖と混同してはいけない。麻薬依存は普通。嗜癖の症状ではない。
・麻薬、非麻薬鎮痛剤とともに必要ならば補助鎮痛剤を処方してもよい。
・psychosocial な介入、身体療法(訳注 膏薬、赤外線ランプなど)、補充療法などの非薬物療法が緩和をもたらすことがある。
・他のすべての介入が失敗したとき neuroinvasive procedure を考えてもよい。
評価:原著は writing committee で改訂され、一次、二次の検討の後、the Steering Committee on Clinical Practice Guidelines for the Care and Treatment of Breast Cancer で改訂された。最終稿はこれらの貢献者のコンセンサスを反映している。今回の改訂は外部検討をうけていない。writing committee が原ガイドラインを更新して検討に回し改訂、the Steering Committee が認可した。
スポンサー:the Steering Committee on Clinical Practice guidelines for the Care and Treatment of Breast cancer はHealth Canada に召集された。
完成期日:2001年6月
方法
MEDLINE(1996年から2000年12月まで)とCANCERLIT(1996年から2000年11日まで)から取ってきた公開された文書を、systematicに検討した。全部の検索戦略に使われた言葉はbreast neoplasms, pain, pain mesurement, chronic pain, 検索を補う意味で使われた単語は narcotic, constipation, alternative medicine, therapeutic touch, massage, reiki。インタ−ネット、検討記事、教科書からの参照も調べた。文書のnonsystematicな検討と、2001年4月まで続けられた。結論が基にしているエビデンスの質については、五つに分類した(エビデンスのレベルを参照)。このガイドラインを作成するのに使った、繰り返しのプロセスは、前記。writing committeeがガイドラインを改訂して、さらにthe steering committeeの検討、改訂、承認に回した。
推奨 エビデンスと理由付け
原因
・乳癌患者は多数の理由で疼痛を経験する。原因を見つけpathophysiology を理解しもっと効果的な管理に向かう。
このガイドラインの焦点は慢性疼痛を管理することにある。急性痛と違って慢性痛は自然におさまらず、はっきりした始まりと終わりがない。直接腫瘍が関与する疼痛(再発を含む)、癌治療の結果の疼痛(リンパ浮腫から生じるひどい不快と疼痛、ガイドライン11参照)、併発症による疼痛(骨粗鬆症、骨関節炎、変性性椎間板症)。乳癌関連の疼痛はTable 1にまとめてある。
癌からの疼痛は巻き込まれる解剖学的構造によってさらに決められてゆく。体性痛は筋肉骨格系に腫瘍が拡がって起き場所がはっきりした持続性の疼痛。内臓痛は実質管腔臓器に病気が拡がってゆくと起こる。持続性で場所がはっきりしない。体性内臓性ともに nocioceptive (疼痛刺激は損傷のない神経系を伝わり解釈される)。神経損傷疼痛は末梢中枢神経系の損傷の結果おこる。撃たれたような、刺されたような、焼けるようなと表現されて、もっとも治療しにくい。癌患者には同時にひとつ以上の疼痛がありうる。
乳癌には特筆すべき疼痛が3つある。乳切後痛、腕神経叢症、転移骨痛。
乳切後痛:ごく普通の術後後遺症。これが起きうることはすべての患者に言っておかないといけない。起きたからと言って再発ではない。10〜30%患者におきる。腋下リンパ節切除、乳切、程度は軽いが温存手術(BCS)後に持続する疼痛を経験する。肋間腕神経(T1の皮膚枝)を手術中に損傷することで起きる。手術後30〜60日で特徴のある疼痛が起こる。胸壁、腋下、腕に焼けるような痛みがでる。服がそこの皮膚に当たっても痛い。腕を動かしても疼痛がひどくなる。それで患者は腕を動かさなくなり、肩こりになる。術中に他の末梢神経を損傷すると同じような慢性疼痛が生じる。これらの悪性でない疼痛を同じような腫瘍関連の腕神経叢症から区別しないといけない。
ベックうつ病インベントリテストの質問
腕神経叢症:これはしばしば腋下やその近隣の組織に再発が起こったことの前触れ。手術、放射線治療時にこれを損傷することは稀。転移癌で起こった場合は腕神経叢の下半分の神経根の分布領域に疼痛がでるのが普通。これとは反対に放射線治療で起きた神経叢症は知覚低下、筋力低下が神経叢の上半分からでる神経根から出る神経繊維の領域に起こることが多い。癌転移で腕神経叢に疼痛を生じる時は肩周り、肘、前腕の正中側、第4、第5指に疼痛を生じる。そのうち筋力低下、筋萎縮が証明され、complex regional pain type 1(交感神経反射筋萎縮)。腫瘍が近隣の硬膜外腔に進展すると腫瘍性腕神経叢症患者に脊髄圧迫という特殊な危険が生じる。
骨痛:乳癌患者で腫瘍が引き起こす疼痛原因のうちもっとも多いのが骨に腫瘍が拡がること。骨転移は早期に見つけるべき。新しく持続する疼痛を訴えたら、骨転移を除外するために適切な診断検査をするべき。骨転移でもっとも多いのは椎体、肋骨、骨盤、大腿骨、上腕骨、頭蓋骨。この部分で野放図に転移が成長すると高カルシウム血症、病的骨折、四肢機能喪失、神経学的問題(硬膜外腔に浸潤する結果、四肢麻痺、対麻痺)、を生じる。女性に脊髄圧迫を起こす一番の原因は乳癌。
評価
・病歴と診察、psychosocial 評価、emotional 評価を使って注意深く疼痛の性質、強度を評価すべき。定期的に疼痛緩和を評価すべき。
最初の評価は疼痛の性質を明らかにするために詳細に病歴をとること。診察では疼痛の解剖学的位置をねらった神経学的検査と刺激法、psychosocial 評価、疼痛の特別な原因を確認する適切な検査、を強調する。つぎの問題は病歴の中ではっきりさせておくべき。
a. いくつ疼痛があるのか?
b. どこが痛いのか?
c. どれくらい痛いのか?
d. どんな性質の痛みなのか?鈍く、焼けるように、刺すように?
e. いつ痛いのか?持続するのか、間欠的か?運動や出来事と関係があるのか?
f, 日常生活にどう影響するのか?
g. どの要素が疼痛を緩和、悪化させるのか?
h, 何が疼痛を引き起こしていると思うか?
身体的な因子に加えて 疼痛の強度、存在に影響していて、治療に対する態度に影響しているpsychosocial な感情因子を見つけることが重要。これには、それだけではないが抑鬱と不安を含む。患者自身や家族が疼痛を重大と考えているかとか、患者の文化、宗教信条も含む。これは"total pain"という概念で,もっとも効果があって妥当な疼痛管理の方法をもたらすために、全ての部分をはっきりさせないといけない。現在過去の薬学、非薬学症状管理介入を検討して他の症状(吐気、便秘)を評価することが頑固な疼痛の緩和に寄与する。
・患者の疼痛強度の自己報告が、すべての最初とその後の評価の源になるデ−タ
医療者は疼痛を過小評価する傾向があり、疼痛強度の患者自身に評価してもらってこれを診断とフォローアップのデ−タ評価の源とするべき。主観的にだが疼痛は評価できる疼痛強度を表現するための標準化されたスケ−ルがいろいろある。単純で効果的なツ−ル(viasual analogue pain scales, 11-point pain scales, Edmonton Symptom assessment Scale)が存在する。標準化されたスケ−ルはコミュニケーションを増し、その結果介入の価値を上げ、疼痛相互の比較を助け、緩和法の信頼性評価をもたらす。
管理
・妥当で効果的な疼痛管理プランを造り出すためには、患者と家族の教育と参加、学際チ−ムアプロ−チが必要。
患者と家族の教育プログラムは効果的な疼痛管理計画の重要な要素。疼痛評価、薬非薬介入、副作用の管理を理解するにはかなり患者と家族に学んでもらうことになる。癌性疼痛とそのコントロ−ルに関する知識の欠如、嗜癖と副作用への恐怖、薬への嫌悪、認知障害(訳注 医療を受ける側への言及!)とその他の心配を明確にしないといけない。これらのために患者とその家族はひとつのプランに固定できなくなることがあるから。
評価においては患者とその家族の理解と好みを反映したものでなければいけない。投薬経路、計画などについて要求、希望、能力に注意しないといけない。注意することで疼痛管理に成功する固定と貢献がえられる。ヘルスケア専門家(ナ−ス、内科医、薬剤師、ペイン専門家など)それぞれのスキル、知識、協力が患者と家族にもっとも有効な疼痛管理プランを保証するのに役立つ。
・疼痛管理の最初の目的は原因を見つけて可能であればこれを治療すること。
診察と適切な診断検査で再発を発見したり除外したりするべき。どんな検査も100%の精度、特異性はないので疼痛は検査結果判明の前でも適切な鎮痛剤で治療しておくべき。
もし判明したらホルモン剤か化学療法で以前治療したことがない転移なら、この2療法が(全身療法)有効な場合がある。タモキシフェンは一過性に骨転移の症状を悪化させることがあるので患者にはよく話しておかないといけない。「燃え上がり」で必ずしも病気の進行を意味しない。
放射線治療は局所的な骨転移には効果的で50%の患者には完全に疼痛が消える(レベル3エビデンス)。なるべく早く放射線施設に紹介するよう勧める。放射線治療で疼痛緩和が得られるまで2〜4週かかるので適切な鎮痛剤がその間必要。
・治療でまず優先することは素早く完全に疼痛をコントロ−ルすること。これは患者が判断する。次に優先することは疼痛の再発を予防すること。
慢性痛は中枢神経での疼痛信号処理を変化させるので、痛みに慣れることはない。むしろ緩和されない疼痛は強化され結果的にもっとひどい症状を呈して治療できなくなる。予防的な方法で素早く完全にコントロ−ルすることが必要。
疼痛治療の薬学的方法
・鎮痛剤は定期的に時間で使用する。疼痛を完全に消し去るのに、必要ならば追加する。
効果の持続時間に基づいて定期的に、必要なときは完全に消し去るために追加する。このほうが疼痛が再発してから使うより効果的。steering committee 内での経験とコンセンサスに基づいている。
・薬物療法が必要なときはWHOの3段階法を使うよう推奨する。個々の疼痛の強度はレジメが始まる段階で決まる。
casari mと貧血
鎮痛剤は3群に分かれる。非麻薬、麻薬、補助薬。単純で効果的な90%の患者に緩和をもたらす鎮痛剤の使用法がWHOに招集された専門家グル−プの合意で作られた。 3段階からできているが、疼痛の程度によって治療レジメをスタ−トする段階が異なる。中程度の疼痛では(5〜6点)すぐに2段階から始める。強い疼痛では(7点以上)すぐに3段階から始める。この3段階法に反応しない場合には神経ブロック、脊髄麻酔、神経破壊、支持精神療法、認知行動療法を考える。
1段階 acetoaminophen か NSAID か併用で軽度中度の疼痛は管理できる。
NSAID は恐らく末梢神経で痛み誘発物質の生産を阻止するが、中枢作用も持つだろう。NSAID は特に骨転移の管理に役立つ。prostagrandine の生産を阻止するためだろう。NSAID がほかの痛み止めに優る訳ではない。はじめの管理として安全で安価で受け入れられ易いので選択するべき。NSAIDの副作用には腎機能障害、喘息の悪化、鬱血性心不全、胃十二指腸潰瘍と出血。65歳以上の患者で長期のNSAID治療を受けるか、十二指腸潰瘍の既往がある人は予防的に消化管合併症を減らすために misoprosol を内服しておくべき(レベル1エビデンス)。
最近新しいクラスにNSAIDが使用されている。選択的 cyclooxygenase 2 (COX 2) 阻害剤は骨関節症、リュウマチ性関節炎で評価されている。例えばBombardier らが報告した、二重盲検、無作為対照試験で8076人のリウマチ関節炎の患者を、rofecoxib 50mg1回(選択的 cox 2 阻害剤)と naproxen 500mg 2回に振り分けた。primary end point は上部消化管出血を確認した時点とした。フォローアップはメジアンで9.0ヶ月。双方ともリュウマチ性関節炎には似たような効果。rofecoxib と naproxene の上部消化管障害の相対リスクは0.5 (95% CI 0.3 to 0.6; p < 0.001) 確認された相対リスクは(穿孔、閉塞、重い上部消化管出血)は0.4 (95% CI 0.2 to 0.8; p = 0.005) (レベル1エビデンス) 選択的COX-2阻害剤が消化管出血のリスクを有意に減らすが、腎障害、中枢神経障害の副作用は非選択的NSAIDと同じ。骨転移についてのCOX-2の効果については無作為試験はない。使えるデ−タに依れば食欲低下が起きたら選択的COX-2阻害剤を考慮すべき。
acetaminophen は NSAID と同じような鎮痛効果をもつが、抗炎症効果がない。軽い疼痛に効果があり普通 oxycodone や codeine と併用する。NSAID のような消化管毒性を持たないので、ASA や NSAID に反応してしまう患者に使える。長期に使用すると肝毒性があるので肝臓転移があるときは注意して使用する。
acetaminophene も NSAID もシ−リング効果があって推奨以上の量では鎮痛効果より毒性の方が強くなる。
2段階 疼痛がうまくコントロ−ルできなくなったら、弱い麻薬(codeine oxycodone )をNSAID に加えるべき。
麻薬は中枢神経で本来の抑制ペプチドの動作をまねて、末梢で一次知覚刺激を抑制することがしめされている。codeine は麻薬の golden standard で acetaminophene ASA と併用で使われている。もっとも効果があるのは codeine 60mg と併用した場合で、120mg 4時間おきに経口(750mg)以上では役に立たないのでもっと強力な麻薬に切り替える必要がある。oxycodone は acetaminophene、ASA と併用して処方するだけの麻薬と考える。2錠掛ける4回以上内服する患者は3段階に進むべき。
3段階 疼痛が強くて2段階の投薬に反応しない場合、(NSAID もしくは補助鎮痛剤ありでもなしでも)もっと強力な麻薬に替えるべき。
まず効果の短いモルヒネを投与し効果が安定したら効果の長いモルヒネに替える。コントロ−ル不能の副作用がでたら hydromorphine で替えるのが適切。hydromorphine は5倍モルヒネより強力ではるかに中間代謝物の薬効がすくない。oxycodone fentanyl は薬効のある代謝物がないので、コントロ−ル不能の副作用がある場合に替えることができる。
methadone は良い痛み止めだが、半減期がばらつき多く長いので使用法が難しい。これは一次薬が効果がなく、継続不能の場合に考慮するべきで、疼痛管理専門家の監視の基でのみ考慮するべき。methadone を処方する免許が必要。diamorphine(heroin) は経口薬としてはモルヒネ以上の利得はない。これはprodrug で経口内服後 morphine に素早く変化する。meperidine は推奨しない。皮下注射ができないし、長期投与で毒性のある代謝物(normeperidine)が蓄積する。中枢神経の易刺激性を引き起こし、myoclonus seizure を起こす。pentazocine は agonist と antagonist の混合物で、精神病様効果を引き起こし、禁断症状を起こす。それで癌関連の疼痛管理には使えない。
麻薬には標準量がない。経口での生体利用率、麻薬受容体利用率は個々人で異なるし、個々人で滴定が必要。不適切に疼痛緩和すると麻薬の量が増え、痛みが取れる量で耐え難い副作用を生じる。即放性の麻薬では4時間ごと以上の投薬は不要。叙法性のものは、最低限12時間に一回で普通は適切。一日一回のモルヒネでもよい。
徐放性のモルヒネ、codeine, hydromorphine, oxycodone, が使える。すでに安定した効果的な量に達してコントロ−ルできた患者に使うべき。疼痛を完全にけす目的や初めから使用するものではない。
麻薬の処方
・麻薬は経口が最初の選択肢。経口がだめなら皮膚貼付、経直腸を考慮。注射が必要なときは皮下注が最初のル−ト。麻薬の筋注は勧められない。
モルヒネ経口、直腸投与での生体利用率、相対効果、持続時間は同じよう。最近使えるようになった持続性モルヒネ座薬のお陰で使いやすくなった。fentanyl 貼用薬は経口で服用できない、麻薬がだめな患者に患者には考慮する。
麻薬は皮下注が一番。ナ−シングタイムが減らせるし、教えやすいし、間欠でも持続(訳注 持続皮下注)でもよい。普通の状況では皮下注の位置は4から7日ごとに替えればよい。静注は皮下注以上の利点はないし頻回に痛い静注位置を変えないといけない。筋注は痛いし不便で勧められない。
麻薬( morphine, codeine ) の代謝物は活性があって、腎臓から排泄される。脱水、高齢、糖尿の患者は腎機能が低下しているので麻薬の副作用がでやすい。この問題は適切に水分補給をし、麻薬の正確を検討し、場合によっては替わりの麻薬に切り替えることで避けられる(hydromorphine, oxycodone, fentanyl )。
麻薬は肝臓で代謝され、一般にひどい肝障害でない限りは麻薬療法に変更はいらない。
アメリカの肥満の統計
・正確に話すことと注意深い観察と滴定が、麻薬を変更する時には必要。
患者は異なる麻薬には反応が違うし、部分的には交差耐性を示す。およその相対効果をTable 2 に示す。副作用で麻薬を交換するならば、公表されている(相当)量の50%から新しく始める。コントロ−ル不能の疼痛が起これば(交換前の)相当量を与えるべき。なるべく早く効果量の滴定をするべき。
・長期に経口morphine と hydromorphine 使用後、注射に変えるときは2:1の比で使用すべき。
同じ薬もしくは異なる2つで、経口と皮下注で相当量を決めるには、1回投与についてである。それを長期投与に一般化する訳にはいかない。この推奨はコンセンサスと臨床経験に依っている。
・麻薬療法を始める、量、ル−トを変更するしたあとは、投与量の評価を24時間後にする。
morphine の血漿排泄半減期は2から4時間で、始めたときも変更したときも24時間で安定する。もし患者が疼痛を24時間、完全に消し去るのに3倍以上の量を要する時には、一日量を24時間基礎量に、完全に消す量全量に加えて計算し直さないといけない。投与量を調整しているときは患者記録情報は意味がない。使った薬の量とその1時間前と後の疼痛のレベルを日記に記録しないといけない。
・麻薬耐性は稀、嗜癖と混同してはいけない。麻薬依存は普通。嗜癖の症状ではない。
耐性:同じ効果を得るのにだんだん多くの量が必要になる抵抗性が耐性である。呼吸困難、鎮静、吐き気が急性、便秘が慢性の副作用。鎮痛の耐性はゆっくりとしか進まない。耐性をおそれて疼痛のある患者に麻薬を控えてはいけない。普通、疼痛の増加は耐性の増加より、病勢の増加を反映している。
身体的依存:薬の効果に身体組織が適応することが身体依存。薬を止めたり、拮抗剤を与えると禁断症候が現れる。数週後には全員が身体依存になるが、もう麻薬が必要なくなった患者に麻薬を止めさせるのは容易。最初に75%を減らす。その後に残る25%を10日から2週かけて減らす。
精神的依存:麻薬の慢性痛治療での嗜癖とは、次のような項目のどれかまたはすべてを含む、持続する麻薬使用(機能しない)の形。麻薬使用と関連した逆の結果(疼痛緩和にも関わらず機能が低下)、コントロ−ル不能の使用し過ぎ(処方量に従わず、複数の処方を得る)適切な鎮痛剤があっても麻薬に捕らわれている、(訳註 以上3つ) 癌性疼痛で麻薬を使用する患者に精神的依存が生じるのは極めて稀。以前に薬物依存がなかった患者に精神的依存、嗜癖が生じる可能性は1000人に1人未満。(訳註 このような嗜癖は容認されるべきか?)
嗜癖様症状:ひどい疼痛が緩和しない場合は緩和を求めて強く集中することになる。その行動は嗜癖のように感じられる。十分量の鎮痛が得られれば急速に消える。(訳註 事実上このような区別は状況の解釈を含むので、作為的。望ましくはないが部分的な嗜癖は不可避。)
鎮痛剤の副作用
患者によって麻薬への反応は異なる。同じ種類のある薬には反応して、他には反応しないこともある。
便秘:麻薬療法を受ける90%の患者に便秘が起きます。麻薬を処方したら自動的に予防腸protocol 教育を付加する。麻薬を使う限り定期的な緩下剤が必要。緩下剤同士を比較した大きな試験はない。刺激性の緩下剤もふつう必要。なぜなら患者には一種類以上の以上必要になることが多いから。普通の腸protocol では石鹸剤(便軟化剤)と刺激性緩下剤を併用して、患者が納得する排便pattern が得られるまで、量を増やす。
嘔気と嘔吐:麻薬を最初に使用すると、ほとんど三分の一の患者が副作用を起こす。短期間吐き気止めを使用すると回復するような副作用だが、嘔気が続くようなら麻薬を変えることを考える。嘔気は多数の原因で起こるので、ひとつ以上の吐き気止め(蠕動促進剤、phenothiazine , steroid)使用を考える。
鎮静:特に年齢の高い患者に鎮静が起こりうる。麻薬療法を始めたり、調整中の時は車の運転、複雑な装置の使用には注意を要する。麻薬を変えたり、量を調整した後の3−5日は鎮静が悪化するが、やがて消退するので運転を許可する。methylphenidate は麻薬鎮静に拮抗するので、中枢刺激剤が禁忌でない患者には使用できる。
昏迷:鎮痛剤は特に年齢の高い衰弱した患者に昏迷を引き起こす可能性がある。もし昏迷が起きたら、可能性のある原因の評価をしないといけない。
呼吸障害:長期にわたり麻薬を使用している患者にはめったに問題にはならない。naloxone 特殊な麻薬拮抗剤が使えることがある。しかしnaloxone の不思慮な使用は苦痛を伴う、急性の禁断症状を引き起こすことがある。naloxone は低酸素、中等度の呼吸減少、これ以上は呼吸が悪化しない場合は使用しない方がよい。死期が近く呼吸減少が病状の進行に依るときには、naloxone は使用せず、麻薬を中止すべき。
アレルギ−反応:真のアレルギ−反応は患者の1%以下にしか起こらず、しばしば患者は自分がmorphine にアレルギ−だと信じている。初回量の使用後重い副作用が生じたら麻薬を変えるのが、妥当。真のmorphine アレルギ−が存在すれば、化学的に異なる族の麻薬(即ち methadone, oxycodone, fentanyl )を使用する。かゆいのはアレルギ−反応ではなく、麻薬関連のhistamine 放出。もし麻薬を変えても痒みが消えなければ、histamine 放出が収まるまで、抗histamine を数日間使用する。
補助鎮痛剤
・麻薬、非麻薬鎮痛剤に加えて、必要なら補助鎮痛剤を処方する。
主たる処方の他に疼痛管理に有用な薬物が補助鎮痛剤。普通に使用されるものを概説する。
corticosteroid: 食欲改善、快適感改善に加えて、corticosteroid は骨転移痛、肝臓、神経圧迫痛を軽減することができるという。転移性の脊髄圧迫痛はdexamethasone で緩和される。経口のpredonisolone は進行癌の対照試験で有意の効果を上げたと報告されている(レベル1エビデンス)。(訳注:steroid はしばしば癌患者の余命を縮めるという意見あり)
抗うつ剤:三環系抗うつ剤は神経障害疼痛の管理に役立つ。脊髄の後角の傷害覚伝達抑制によるらしい。一番広く報告されている経験はamitriptyline だが、癌の患者にはその抗cholinergic 副作用、口渇、便秘のため使いにくい。うつ病を治療するより少ない量で疼痛の軽減が得られる。3−5日以内に効果が見られることが多い。抗cholinergic 効果の少ない抗うつ剤にはdesipramine , nortriptyline がある。paroxetine 選択的 serotonine re-up taker 阻害剤は糖尿病神経障害性疼痛の治療薬だが、他のtype の神経障害疼痛にも効果がある(レベル5エビデンス)。
抗痙攣剤:三叉神経痛で示された如く、刺されるような神経痛の成分の管理に有効。普通使われるのは、carbamazepine, gabapentine, phenytoin, valproic acid, topiramate, clonazepam。 carbamazepine は第一選択 gabapentine はヘルペス後神経痛に効果があり、気分、QLを改善する(レベル1エビデンス)。今度もgabapentine と他の薬を比較した無作為対照試験はない。
局所麻酔薬:mexiletine, tocainide, flecainideなどの全身投与 は不応性神経障害疼痛管理に使える。mexiletine と三環系抗うつ剤を併用するときはケアをするべき。精神病様の副作用がある。それぞれの薬の相対的役割と併用毒性の頻度は決定されていない。(訳注:determined は原文の誤り。undetermined )局所の局麻薬は局所神経障害疼痛のコントロ−ルに使われる。ヘルペス後神経痛のように皮膚神経を含む場合に使われる。
substance P 阻害薬:capsaicinはsubstance P 阻害剤のひとつで局所麻酔薬。皮膚の痛覚過敏、焼け付くような神経痛を減らすと言われているが、その効果は未証明。
bisphosphonates:悪性高カルシウム血症管理の第一選択の最近の薬(pamidronate)。骨破壊性の骨吸収を防ぐことで、骨転移の悪性骨疼痛、その他の骨格合併症を防ぎ、緩和する(レベル1エビデンス)。複数の疼痛性転移部位のある患者には、bisphosphonate の静注を考えておくべき。bisphosphonate を乳癌患者に早期に使用すると骨転移が減るか否かについては、エビデンスに賛否両論。Hortobagyi らの無作為対照試験では、382人の骨転移性乳癌患者が3−4週のpamidronate とplacebo の静脈投与を受けた。患者は2年間毎月評価された。対照群よりpamidronate 群の方が疼痛スコアが有意に減り(41%対55% p = 0.015)。痛み止め使用が減った(26%対40% p = 0.011)疼痛抑制の放射線照射も減少(28%対45% p < 0.001)。
疼痛抑制のための非薬物的方法
・非薬物的治療(社会心理的介入、物療、補完療法など)が緩和をもたらすことあり。
薬物的、非薬物的方法の組み合わせが有効な管理になる。
社会心理的介入
認知行動療法はリラックス訓練、催眠、誘導心象、気晴らし、対抗的自己言及、問題解決。疼痛関連の苦痛を減らすのにリラックス法は有効でありうる。特別な呼吸をしたり、視覚化したり、音楽や自然音で刺激したり。催眠を通して誘導心象とリラックセイションは、認知行動療法のメタ分析で、もっとも効果的な疼痛抑制戦略。Spiegel と Bloom の無作為対照試験では、支持グル−プ療法と催眠の介入は抑鬱、疲労感、疼痛を減らす効果的な介入(レベル1エビデンス)。(訳注:苦痛の緩和という点で評価されている)
物療(訳注:本来は身体療法、「物療」は歴史的誤訳)
これらには運動、固定、経皮電気神経刺激(TENS)、表皮温熱、冷却、マッサ−ジ、振動の使用を含む。これらの非侵襲的方法は教えやすく、患者がリラックスするのを助け、筋肉のスパスムを和らげ、苦痛から患者を逸らせる。いろいろな表面温熱は安全だが、深部温熱(diatermy, ultrasonography )は腫瘍成長に影響するかもしれない。(訳注」:根拠の明示ない主張) 外傷直後の冷却は炎症腫脹を減らし、筋スパスムを緩和するかもしれない。マッサ−ジが疼痛を緩和するのに果たす役割を支持する科学的エビデンスは限られているが、筋スパスムを緩和しリラックスを促進するのに、普通有用。(訳注:知覚の評価には、必ず自己言及が関わり、統計学的に不安定。そのための結果で、未来的に期待があるわけではない。治療法は必ず多少とも、類似の因子を抱える。ここの「科学的」は決定論的)
リンパ浮腫は極端に不愉快でときに疼痛を起こすが、圧迫療法に反応する。(ガイドライン11参照)
薬物療法がうまくいっているにも関わらず、運動時に疼痛があるときは、特別な位置取り固定が有用。全身か四肢かを長期に固定するのは、関節拘縮、筋萎縮、心肺不調、機能喪失を防ぐ意味で可能な限り避ける。
補完療法
普通の補完、代替、非従来療法とは、心理療法(瞑想、祈り、バイオフィ−ドバック)運動の類(気功、太極拳、ヨガ)energy healing modality (therapeutic touch, reiki, healing touch ) ホメオパチ−、ハ−ブ療法。 灸は広く疼痛の補助療法として受け入れられているが、慢性疼痛の無作為対照試験はされていない。(訳注:余命の延長を期待するのでなく、疼痛緩和であれば結果は即座で自明。なぜ試験が必要なのか?) 癌性疼痛緩和戦略としての有効性のエビデンスを全く欠いているにもかかわらず、これを疼痛管理プログラムに取り込む患者が増えている。患者は補完療法が有用でも、内科医とこの話をするのをためらう。オ−プンなコミュニケ−ションと患者の好みを尊重する基調が、疼痛緩和治療について患者が集中する役に立つだろう。個人に最も有効な治療法の組み合わせを考える役に立つ。(訳注:considers の主語が不明)
神経外科的介入
・あらゆる介入が失敗したとき、神経侵襲的手段を考える。
不応性疼痛は疼痛専門家に照会すべき。侵襲的でない手段を侵襲的手段に先行させるべき。脊髄圧迫以外は神経外科的管理は不必要。末梢神経ブロック、中枢神経系ブロックははっきりと症状が診断されてから考えるべき。腕神経叢障害に交感神経破壊、局所胸壁疼痛に肋間神経ブロック、C3脊髄以下の片側肢疼痛に前外側コルドトミ−。他の部分の治療と同じに神経破壊の成功は手術者次第。熟練した麻酔医が側にいる施設では麻薬の脊髄内、脳室内投与は麻薬の全身投与が無効か、耐えられない副作用を生じる患者に適応。
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