2012年4月23日月曜日

呼吸器内科医:感染症



新型インフルエンザが再びチラホラ流行っている。
当院にはいまのところ受診・入院歴はないが・・・

Lancetから妊婦に対する新型インフルエンザに関する論文が出た。
妊婦だからといって胎児の影響を考えてタミフル投与をしないと
とんでもないことになってしまう、という警告論文だ。

妊婦だろうと、タミフルは投与すべし。

CDCからは妊婦がS-OIVに感染した場合は、すみやかに抗ウイルス薬
を用いた治療を行うべき
としており、これを裏付ける内容である。

H1N1 2009 influenza virus infection during pregnancy in the USA
The Lancet, Early Online Publication, 29 July 2009doi:10.1016/S0140-6736(09)61304-0

2009年4月15日から5月18日までの間に、米国内13州で、
31人の確定例妊婦、3人の疑い濃厚例妊婦が報告された。
年齢は15歳から42歳(中央値は26歳)で、約半数がヒスパニック系で、
5人に1人は未産婦だった。34人中22人(65%)は妊娠初期または中期で、
9人(26%)は妊娠後期だった。


ケビンtrudeus減量治療

確定例および疑い濃厚例の計34人の妊婦のうち、33人(97%)に発熱がみられ、
32人(94%)はインフルエンザ様疾患(発熱と咳またはのどの痛み)を呈していた。
発熱以外で多かった症状は、咳(94%)、鼻漏(59%)、のどの痛み(50%)、
頭痛(47%)、息切れ(41%)、筋痛(35%)など。嘔吐(18%)と下痢(12%)は
少なかった。肺炎が疑われた患者は6人で、胸部レントゲンにより診断が
確定した患者は4人だった。
これらの症状は、妊娠していない生殖年齢の女性や一般の人々とほぼ同様だった
が、息切れのみ妊婦に有意に多かった。妊娠していない生殖年齢の女性と
比較したリスク比は1.7(1.0-2.7)、一般集団と比較したリスク比は2.3(1.5-3.6)。
米国で当初1カ月間に報告された確定例と疑い濃厚例に占める妊婦の割合は
0.62%(5469人中34人)で、発症率は妊婦10万人当たり1.0と推定された。


貧血の危険性

米国では45人がS-OIV感染により死亡していた。
死亡した6人の発症から受診までの日数の中央値は3.5日(1~7日)。
受診し、そのまま入院した患者が2人いたが、それ以外の患者は受診から
3~4日後に入院していた。最初の受診から死亡までの日数は6~19日(中央値12日)。
全員にオセルタミビルが投与されたが、投与開始は発症から6~15日目(中央値9日)と
遅かった。また全員がウイルス性の肺炎を発症、その後急性のARDSをおこし
人工呼吸器を要した。

胎児に対する安全性に不安があるとして妊婦に対する抗ウイルス薬の投与は
避けたいと考える医師や、抗ウイルス薬の使用を拒む妊婦がいることは確かだが、
今回の分析から、妊婦の新型インフルエンザ感染に対する抗ウイルス薬の利益は、
潜在する可能性のあるリスクを上回ると考えられる。

関連して、新型インフルエンザのニュースを2つ。


呼吸疲労頭痛息切れ

妊娠している女性は新型インフルエンザで死亡する危険が高いとする報告を、米疾病対策センター(CDC)が29日、発表した。
 妊婦の重症化は欧州でも報告されており、今後の流行に向けた日本の対策でも考慮する必要がありそうだ。
 CDCによると、4月中旬から6月中旬までの間、米国では新型インフルエンザで45人が死亡したが、このうち6人が特に持病のない健康な妊婦だった。妊娠期は、免疫やホルモン分泌が通常時と変わるため、妊婦の死亡の危険を高める要因になるとみられる。
 CDCは「妊婦が新型インフルエンザにかかった恐れがある時は、速やかに治療薬の投与が必要」としている。
 米政府は、医療従事者や子供のほか、妊婦に対しても、優先的に新型インフルエンザのワクチンを接種する方針だ。(2009年7月29日 読売新聞)


厚生労働省は22日、国内で初めて、新型インフルエンザ感染者が急性脳炎(インフルエンザ脳症)を発症したと発表した。
 同省によると、今月19日、川崎市に住む7歳の小学生男児が、39度以上の熱を出した。翌日になっても熱が下がらず、幻覚を見るなど急性脳炎の症状を示したため、感染症指定病院に入院、新型インフルエンザと診断された。治療薬タミフルを投与され、22日には熱が36度台に下がったという。季節性インフルエンザにかかった未成年者が急性脳炎を発症すると、異常行動につながる場合がある。厚労省は「新型でも脳炎が起こることが分かった」として、感染した子どもの様子に注意するよう呼びかけている。(2009年7月23日 読売新聞)



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